BEEK DESIGN
BEEK DESIGN is Creative Desgin Group in Yamanashi, Japan.

Archive for 6月, 2017

seasons

6月も後半。甲州市塩山の福生里(ふくおり)という集落で梅もぎをしてきました。富士山がとてもよく見える場所にある梅の木。来年この梅の木がある場所はあたらしくワイナリーへと生まれ変わります。BEEKではそのプロジェクトのデザインや広報担当で関わっています。しかもこの場所の大家さんは以前取材でお会いしていたこともあって、ご縁を感じました。ワイナリーを集落の中に作るので、周辺の方々にもしっかりと周知や関係性をつくっていくこともだいじなこと。まずは大家さんに協力もしてもらって、収穫した梅で梅干しや梅酒、ジュースをつくって来年ワイナリーでもご提供できるようにしたいと思いました。


梅の木があちこちにあって、いろいろな場所で友人や家族も梅を仕込んでいました。うちのおかんも30kgくらい一人でつけて、近所に配ってまわってます。自然と梅が実をつけ(だいたいなにも手を入れずに)それを仕込んで1年をかけていただく。とても普通でとても気持ちのよいことを、今更ながら感じています。自然の中で汗をかいて、作業をしながらくだらない話をいくつも重ねる、そしてできるものを待って毎日の中でその自然をいただく。梅だけじゃなくて、季節それぞれで果樹や野菜やお米はそうやって作る人がいて、収穫しその恩恵をいただく。旬は待ってくれない。ふだん忙しない毎日の中、ぼくらはお金でその手間を買っている。いい部分もあるし、忘れかけてしまう部分もある。あたりまえなことを見失ってしまうこともある。自然の循環をていねいに見つめれば、きっと今まで感じなかったことに気づいて、心の中にも小さな芽が育っていくのだと思う。日本には四季がある。その季節ごとに、僕らはいつも揺さぶられる。


日本一人口の少ない町としても知られる、山梨県早川町の移住促進のツールとなる冊子「いさなふ」をNPO法人 日本上流文化圏研究所(略して上流圏)さんからのご依頼で共同で制作させてもらいました。BEEKは撮影、デザイン、編集構成、ネーミングなどを担当、上流圏さんは文章を書いていただいてます。


正直、このお話が来るまでは早川町には数回しか訪れたことがありませんでした。なにかの途中で寄る場所にあるわけではないので、意思を持って行く町でもあるわけです。川が流れ山が近い。その山あいにいくつかある集落。コンビニもスーパーもありません。端的に言ってしまうと不便極まりないのです。しかし近年、「田舎で子育てがしたい」という人が増えてきているとのこと。早川町に移住して来るひとは、並大抵の覚悟ではなく、きっちりと意思をもって移住してくる人が多いのだそう。早川町の大自然の中での子育ては、都会から見たら夢物語に見えるかもしれません。しかし、意思を持てばそれもできる土壌がある。不便だからこそ協力し合い繋がりが生まれる。それは本気で生きるということ。必要最低限の情報の中では自分と向き合う時間も増えるはずです。

そして特に力を入れているこどもの教育。小学校の授業にも参加させてもらいましたが、少人数のクラスでしたがとても考えられて授業が行われていました。学校の生徒全員が把握できる人数なので、学年を問わず交流の場が多い。学校の先生もこの人数だと先生自体が教育委員会で減らされてしまうとのことですが、そうならないように早川町で独自に先生を雇用しているとのこと。人数が少ないからこそ緻密な授業ができているように思えました。もちろん大自然をいかした自然教育も多いそう。

ぼくはこの冊子に「いさなふ」というタイトルをつけました。
古事記にも見られる言葉で、今の言葉で解釈すると「みちびく」と言えるかもしれません。奮い立つという意味と引き戻すという相反する意味をもつ「いさ」と、ものごとを合わせなじませるという土の意味をもつ「なふ」。早川町に通う中で、とてもあう言葉ではないかと思ってこの名前を冊子のタイトルにしました。
自然の中にあるふつうの暮らしから、いさなふ。

JUST

その瞬間はくる。どんどん季節は流れて。ちょうどぴったりと、お釣りなんて出ない。